バラの香りをひとひら
- Aria Bloom
- 8月24日
- 読了時間: 2分
バラの香りが、ふわりと午後の空気に溶けていった。
そっと近づかなくても、ほのかに甘く高貴な香りがお部屋一帯に漂っている。
ふわっと香る薔薇たちを眺めていると、
今日という日が少し特別なものになる予感がした。
この香りも、今日という一日も、誰かと分け合いたくなった。

昨日、知人からバラの花束を頂いた。
何かの記念日でも、特別な日でもない。
ただ「これ、あなたに似合いそう」と、
ふいに手渡されたその花束は、
まるで言葉の代わりに”心”を届けてくれたような気がした。
ちょうど本日ネイルサロンの予約をしていたので、
自宅を出る前に、ネイルのお姉さんの笑顔がふと浮かんだ。
とても美しく、いつも丁寧で、ネイルだけでなく美容に詳しい彼女。
自分でサロンを営む彼女は、しなやかで芯がある。
自立して頼もしい、そんな彼女との会話は、どこか私の背筋も自然と伸びるようで。
日々の小さな美容の話から、ふと将来のことまで話したりして──
月に1度、会うだけなのに、まるで昔からの知っているような、不思議な安心感もある。
この、バラの香りを少しお裾分けしたくなった。
「これ、どうぞ。少しだけど薔薇です…」
差し出した瞬間、
彼女の目がふわっと柔らかくなって、
「わぁ、うれしい」と笑った。
その言葉と表情に、なんだか私の胸までぽっとあたたかくなった。
喜びって、不思議。
ひとりで味わうのももちろん素敵だけど、
こうして誰かと分かち合うことで、
何倍にもふくらんで返ってくるんだな、って小さなことだけど気づいた。
花束の美しさよりも、
それを見つめる人の笑顔の方が、ずっと心に残るもの。
あ、私に花束をくれた人も同じことを思ったのかもしれない。
あの日もらった薔薇は、
今日また、誰かの心にも、あの香りがふんわりと咲いている気がする。
見えなくても、触れなくても、香りのように漂うやさしさがある──
そう気づけただけで、今日はとても満ち足りた一日だった。
⸻
こんなふうに、
静かな午後にそっと咲いた“ちいさな贈りもの”。
またいつか、ふいに思い出す日が来る気がする。
