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バラの香りをひとひら

バラの香りが、ふわりと午後の空気に溶けていった。

そっと近づかなくても、ほのかに甘く高貴な香りがお部屋一帯に漂っている。


ふわっと香る薔薇たちを眺めていると、

今日という日が少し特別なものになる予感がした。


この香りも、今日という一日も、誰かと分け合いたくなった。


午後の光と、やさしさを分けあう時間
午後の光と、やさしさを分けあう時間


昨日、知人からバラの花束を頂いた。

何かの記念日でも、特別な日でもない。

ただ「これ、あなたに似合いそう」と、

ふいに手渡されたその花束は、

まるで言葉の代わりに”心”を届けてくれたような気がした。


ちょうど本日ネイルサロンの予約をしていたので、

自宅を出る前に、ネイルのお姉さんの笑顔がふと浮かんだ。


とても美しく、いつも丁寧で、ネイルだけでなく美容に詳しい彼女。

自分でサロンを営む彼女は、しなやかで芯がある。

自立して頼もしい、そんな彼女との会話は、どこか私の背筋も自然と伸びるようで。

日々の小さな美容の話から、ふと将来のことまで話したりして──

月に1度、会うだけなのに、まるで昔からの知っているような、不思議な安心感もある。


この、バラの香りを少しお裾分けしたくなった。


「これ、どうぞ。少しだけど薔薇です…」


差し出した瞬間、

彼女の目がふわっと柔らかくなって、

「わぁ、うれしい」と笑った。

その言葉と表情に、なんだか私の胸までぽっとあたたかくなった。


喜びって、不思議。

ひとりで味わうのももちろん素敵だけど、

こうして誰かと分かち合うことで、

何倍にもふくらんで返ってくるんだな、って小さなことだけど気づいた。


花束の美しさよりも、

それを見つめる人の笑顔の方が、ずっと心に残るもの。


あ、私に花束をくれた人も同じことを思ったのかもしれない。


あの日もらった薔薇は、

今日また、誰かの心にも、あの香りがふんわりと咲いている気がする。

見えなくても、触れなくても、香りのように漂うやさしさがある──

そう気づけただけで、今日はとても満ち足りた一日だった。




こんなふうに、

静かな午後にそっと咲いた“ちいさな贈りもの”。

またいつか、ふいに思い出す日が来る気がする。



© 2025 Aria Bloom. やさしく、咲いていく日々を。

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